植物を育てるための知識
私が植物の育成を行う以前は、熱帯魚の飼育・繁殖から始まり、外国産カブトムシ・クワガタ・国産のオオクワガタの飼育・繁殖を行っておりました。そのお陰もあり初めての植物育成も容易に行う事ができました。その理由とは、動物・魚類・昆虫の飼育と・植物の育成には通じるものが多くあったからなのです。今回はその共通点のお話しさせて頂きたいと思います。
共通点その1|温度(おんど)
温度管理は、熱帯魚・昆虫・植物の全てに共通することです。まず初めに熱帯魚は名前の通り熱帯に生息する魚の総称ですので、四季がある日本の環境では生きていくのが困難になります。その理由と致しましては、日本の冬は気温が下がり、夏は気温が上がる為、それに伴い当然川や池の水温にも大きな温度変化が起こります。その為一定の暖かい水温で生きていた熱帯魚には、この温度変化に耐える事ができず生きていく事ができません。そこで熱帯魚を飼育する上ではヒーターとサーモスタットが必要となってきます。飼育する熱帯魚の理想的な水温が保てる様、サーモスタットで一定の温度になる様設定を行い、それを下回った際はヒーターの力で水を温めるという形になります。逆に夏になり水温が上昇しすぎた場合は、ファンなどで水面に風をあて上昇した水温を下げます。この様な形で、水槽内の水の温度を一定に保つ事で熱帯魚は元気に飼育する事が可能です。
続いて昆虫の場合も同じく温度管理が大切となってきます。特に外国産のカブトムシ・クワガタなどは現地の平均温度内で管理できないとすぐに弱ってしまいます。海外でも日本の気候に近い環境のカブトムシ・クワガタは問題ありませんが、気温の高い熱帯地域に生息するカブトムシ・クワガタは常に暖かい温度で飼育する必要があります。日本のカブトムシのように夏だけではなく、長寿命で1年近く生きられるヘラクレスオオカブトムシなどは、年間を通して暖かい温度にする必要があります。外国産カブトムシ・クワガタに関わらず、日本のカブトムシも日本の環境下では秋になり気温が下がり始めると死んでしまいますが、ショーケースにヒーターを入れ、気温を一定に保てる環境で管理してあげると日本のカブトムシでも年越しが可能です。当時、夏の終わりくらいに羽化してしまったカブトムシを、体力を消耗させないよう単独飼育で後尾もさせず一定温度の環境下で飼育したところ私が飼育していた日本カブトムシは年越しに成功しました。成虫に関わらず幼虫も常に25度前後の暖かい環境下を常にキープしてあげる事で、餌の食いが蛹になるまでの期間安定してよく食べる様になるので、幼虫が大きく育ち成虫になった際に大型になる個体が多く羽化します。
最後に植物になりますが、こちらも日本の植物でない植物(塊根植物やアガベ)は、日本の冬の寒さには耐える事ができず屋外では枯れてしまう植物も多く存在します。秋になり朝晩の気温が下がり始めてきたら屋内で管理します。気温の下がる冬場は屋内管理だけでは温度が低い為、枯れることは阻止できますが、気温が高い夏場に比べ成長速度がとても鈍くなります。また、植物用のLEDなどを使用し、十分な光が当て、エアコンなどで常に一定の温度で保てる部屋で年間管理すると成長も安定し早く大きくなります。
この様に、育った環境と同じ気候や温度に近い状態を再現してあげる事で、魚類・昆虫・植物は元気で過ごす事が可能となります。
共通点その2|光り(ひかり)
続いての共通点は、光り(ひかり)になります。太陽光と記載しても良かったのですが、太陽光以外の光りでも可能な為光りという総称にしております。
まず初めの共通点の説明は魚類からさせて頂きます。水槽にはほとんどの方が上部にライトを設置しています。水槽内の水草の育成を行う為という事もありますが、魚類にとっても光りは大切な役割をしています。魚類にも昼行性【日中に活動し餌を捕食する魚類】と夜行性【日没後から活動し餌を捕食する魚類】がいるので、照明のON・OFFを行う事で、日の出から日没を擬似的に演出し魚の体調を管理しています。その他にも色鮮やかな熱帯魚を鑑賞として美しく魅せる為にも光りは重要になってきます。
続いて昆虫の場合でも光りは重要な役割となっていて、カブトムシ・クワガタなどは日没から活動するものが多く、日中は木の裏側やおが屑・腐葉土などに潜っている事が多いです。夜になると餌を求めて地上に出てきて活動を開始します。私の場合は、大型のショーケースなどに照明を付け、その中に昆虫が入った飼育ケースを並べ、熱帯魚同様に照明のON・OFFを行う事で、日の出から日没を擬似的に演出し昆虫の体調を管理しています。
最後に植物になりますが、植物も当然ながら光りはとても重要になります。光を浴びて葉からの光合成を行ったり、ヒョロヒョロと徒長せず太く立派に成長する為には、光りは必要不可欠となります。一日中太陽光がしっかりと当たらない場合などは、屋外であってもアガベなどは徒長してしまいます。出窓など一定方向にしか太陽の光が当たらない場所などでも日の当たる窓の方向に向かって植物が傾いてしまいます。そういった場合は、上記の魚類や昆虫の様に、しっかりと真上から定められた時間しっかりとLEDライトを照射して屋内で管理する方が良い場合もございます。
上記のように【光り】は、魚類・昆虫・植物にとって、とても重要な共通点となります。
共通点その3|土(つち)
魚に水ではなく土??と思う方もいらっしゃるかとは思いますが、熱帯魚を飼育する上で水槽の底に砂利や土を敷くのはとても大切なのです。その理由と致しましては、いくつかあるのですが、まず初めに水質を安定させる為には、水槽内にバクテリアを定着させるのですが、そのバクテリアの住処として砂利や土はとても有効になります。水槽内にバクテリアがいると、魚の糞や尿を分解してくれるので水質が悪化してしまう事を防ぐ事ができ、限られた水量の中で長期間魚を飼育する事が可能となります。 続いて砂利や土でpH(ペーハー)を自由にコントロールできます。pH7.0が中性であり、それ以下の数値が弱酸性となり、それ以上がアルカリ性となります。魚の種類によって【アルカリ性を好む魚・中性を好む魚・弱酸性を好む魚】がいるので、それに応じて様々な砂利や土を用いる事で簡単にpHを自由自在にコントロールする事が可能となり、熱帯魚が住んでいた環境に近い水質を水槽内で再現する事ができます。
昆虫の場合は成虫ではなく幼虫に土が必要となる種があり、代用的な昆虫でいえば日本カブトムシになります。カブトムシの幼虫の主な主食は、秋になり葉が落葉しその葉が積もり雨に濡れ微生物に分解され発酵してできた腐葉土を食べることで大きくなります。【※腐葉土|落ち葉がミミズや微生物、バクテリアなどによって分解・発酵されて土状になったものです。】 余談ですが、カブトムシの幼虫さんが食べた腐葉土が糞となってお尻から出てくるのですが、コロコロとした5〜7ミリ程ある意外と大きな球状のもで、その糞を肥料として畑の茄子に与えたところ、大きな茄子ができました。糞を肥料として与えた茄子と与えなかった茄子では明らかに差がでました。
最後に植物になりますが、植物も非常に土は大切なものとなります。雨が降ればその雨水を土が吸収し、暫くの間水分を土が蓄えてくれます。アスファルトの上の雨水はすぐに晴れていれば乾いてしまいますが、土に染み込んだ雨水は暫くは乾きません。植物の根が必要な水分を吸い上げるにはある程度の時間が必要となるので、土はとても大切なものであり、水分とともに土の中にある栄養も吸い上げる事で大きく育ち、大きな実を実らせる事が可能となります。 勿論、土を使わずに水と栄養のみの水耕栽培で育つ植物も存在しますが、乾燥地帯で生きる植物にとってはこの水耕栽培が不向きな植物も少なからず存在します。土といっても様々な種類が存在し、水分や栄養を長期間蓄える事ができる土壌にしたり、すぐに乾く水はけの良い土壌にする事もできる為、様々な土を組み合わせる事でその植物が育ちやすい土壌作りが可能となります。まずは手にした植物がどの様な環境下で育っているのかを調べる事で、その環境に近い状態を再現する方法の一つとして、自分自身で様々な種類の土をブレンドして作り上げたオリジナルの土壌づくりも世界の植物を育てる楽しみのひとつなります。
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